私はかつてプロボクサーでした。
横浜にある花形ボクシングジムに所属して、後楽園ホールを主戦場として試合をしておりました。
スーパーライト級~ウェルター級の階級で、十数試合行い、勝ったり負けたりの平凡な選手でしたが、なんとかA級ボクサー(8回戦以上)に上がることが出来ました。
思い出深い試合としては、負けてしまった試合ですが、後にスーパーライト級の日本チャンピオンとなり、同階級の日本タイトル防衛記録を作った選手との試合です。
結局この試合を最後にボクシングを引退し、高校時代を過ごした街で、妻の実家のある函館に戻りましたが、この時の悔しさが今の道を歩んだ原点になっていると思います。
私の親は転勤族で、幼少時代は札幌・室蘭・旭川・釧路や秋田県などの地を転々とし、中学校3年生の頃に転校してきたのが函館でした。
そのような経緯もあり、出身地はどこかと言われればどこか迷ってしまいますが、函館は中学校から高校卒業までの多感な時期を過ごした土地であり、アマチュアでボクシングを始めた場所でもありますので、他の街より思い入れの深い街です。
ボクシングを引退した後は、普通に就職して平凡に暮らそうと思っていました。
函館で就職したのは電気工事協同組合というところでの仕事で、比較的安定した仕事で休みも多かったので、家族とも過ごす時間を持つことも出来ました。
そのようにしてボクシングを引退した後の人生を謳歌していたかといえばそんなことはなく、リングという強烈な刺激のある世界に生きてきた自分にとっては何かが違うと違和感を感じる毎日でした。
ボクシングでは自分の限界を感じて引退したわけではなかったので、未練たらたらで、どこかに燻ったような感覚がずっと続いていたのです・・・
戦いたい欲求を満たすため、総合格闘技のジムに顔を出したり、指導者として活動していた時期もありました。
そのころの自分は自分の無念の思いを晴らすためのエゴの塊だったような気がします。
結局何もかもうまくいかず自暴自棄になっていました。
ただ、そのような気持ちを引きずったままいつまでも人生を過ごしていくわけにはいかないという思いだけはあり、次の目標を見つけようと模索する毎日でした。
その頃は、わずかな期間でしたがボクシングクラブを運営するという経験もして「経営者」ということに興味を持ち始めていた頃でした。
事業を興して経営するとはいってもボクシング以外に何も取り柄もない自分にとっては雲を摑むような話でしたが、手に職をつけたいという気持ちと経営を学びたいという気持ちがふつふつと湧き上がってきて、自分に出来ることは何かないかと色々と調べ始めました。
色々な書籍を読み漁っていくと、ペンひとつで勝負することが出来る“○○士”という士業の仕事があることをあらためて知りました。
弁護士、司法書士、税理士、行政書士等々・・・
いままで全く興味がなかったし、関わることもなかった法律関係の資格でしたが、その中でも幅広い業務に携わることが出来る“行政書士”という資格に興味を持ち、目指してみようと思いました。
法律系の資格はどれも合格率一けた台の難関資格。行政書士もその枠内にありましたが、なぜか「自分なら合格できる!」という根拠のない自信が生まれてきたのです。
これはボクシングを始めた時もそうでした。自分自身の魂が揺さぶられ、自分が本当にやってみたいことが出来た時、そこが厳しい世界だったとわかっていたとしても根拠のない自信を持って無理やりにでも初めてしまうものなのではないでしょうか。
始めた受験勉強。
右も左もわからなかったので、最初は通信講座から始めました。
憲法からスタートした受験勉強も最初はわからないことだらけで、勉強もなかなか進みませんでしたが、勉強嫌いだった自分が生まれて初めて知識欲に目覚め、勉強すること自体が楽しくなっていきました。
しかしながら試験合格の壁は厚く、不合格の連続・・・
たった1問の差で涙を飲んだ年もありました。
結局、合格出来たのが4年目。
何度も挫折しそうになりましたが、あきらめずに摑んだ合格は至上の喜びでした!
しばらく味わっていなかったリング上で勝利した感覚をしばらくぶりに味わうことが出来ました。
そして合格後。
それまで合格することだけしか考えていませんでしたが、仕事として行政書士をやってみたいという気持ちがふつふつとわきあがってきました。
現在の仕事を捨てて行政書士の世界に踏み入れることに躊躇もあり、しばらくの間悩みました。
しかしながら、自分はたとえ苦難の道が待ち受けているから人に「やめとけ」と言われてもそれがどのくらい辛く苦しいものなのかを実際に確かめてみないと気がすまない性格なのです。
だから思い切って踏み出してみることにしました。
踏み込んだ行政書士の世界。
確かに自営業者の道は辛く苦しいこともたくさんありますが、やりがいも多く、今まで見ることは出来なかった広く大きな世界を堪能しております。
そして皆様方のためにお仕事を通してお役立てさせて頂くことが出来て、本当にありがたく思っております。
個人の方、経営者の方問わず、困った時の身近なパートナーでありたい。
今はリングに立つ主役ではありませんが、世間というリングで戦う皆様方を下から支えるセコンド役として皆様の明るい未来を応援し続けたいと思っております。